2018年8月7日火曜日

蜘蛛

 仕事の合間に、今日見たことを思い出す。自分の住んでいるアパートの階段の上がり端に大きめの蜘蛛が蜘蛛の巣を張っている。数センチくらいのよく家の中でも見掛けるようなケチな蜘蛛ではなく巣も本人も相当の大きさで、巣は三十センチくらいで偶然かもしれないが蝉を捉えた。夜中かけて一匹の蝉を食い、そして床に捨てた。それも意図的に捨てたのか自然に落ちたのかわからない。蜘蛛のはっきりとした習性を私は全く知らない。しかし蜘蛛は意図的に巣を畳んでは張り、またなくなってはすぐに組み立てていた。日中にはどこを見てもいないのに、晩になると決まりきったように巣の多角形の相似形のちょうど中心に、脚を畳んで縮こまったような姿勢で構えている。朝方、巣は残っているときもあるし完全になくなっている時もある。こちらとしては何の恨みもないが管理人は一定の責任を以てそこらに転がってくる蝉も蜘蛛に食われた蝉も片付けるが、蜘蛛の巣も払いのけているのかもしれない。積極的関与をすぺくもない事柄なので、むしろ純粋に観察している楽しみみたいなものがあるが、一つの夏の出来事、それこそカーテンをようやく買ったとか近所の空き地が建造物になったとかそういう類のささやかなものではあるが、何週間かに渡って日々の変化を見せてくれる貴重な出来事の一つに、自分の中ではなりつつある。