2018年4月9日月曜日

2018/04/09

 ホームドアに安心したと思ったら今度は電車とホームの間のスペースが少し広めだったら心の中で文句を言っているのだから人間の要求はとどまることを知らない。緑色の時計を飽くことなく眺めている。雨はようやく止んだ。運転している時間帯はホーム内にものを落としても拾うことが出来ないため、どれだけ自分の中で緊急性があろうとすべての電車が通り過ぎた後でしか、あのカニの手みたいなマジックハンドで(イラストの中ではシルエットになった少女が帽子かなんかを落としてそれを拾ってもらっている場面が浮かぶだろう)落下物を拾うことが出来ない、紙切れを拾うには熟達した腕前が必要なのだがそもそも何かを落とす人自体が少ないため、特に入りたての駅員なんかは全然慣れていないことが考えられる。万が一のことを考えて、紙切れであろうと首からストラップを掛けてぶら下げるか。向かいの左前の席に座っている人が、ヤマハ音楽教室で習いたてといった感じの楽譜を広げて頭の中で練習しているんだか読んでいるんだかしていた。焼き肉のことを考えていたのかもしれない。楽譜のある音楽というのが不思議と新鮮というか逆に物珍しく、回帰してきたような感じを覚えた。カニ道楽で、専用のハサミを使って身をほじくり出しているときの惨めさと陰気な喜びが、会場内にいるすべての人に水が染み込むように次第に浸透していった。ある意味で熱狂といってもいい。陰気な熱狂とでもいうものがあってもいいじゃないか。駅員が発車音を鳴らした。音楽ではなくブザーだった。

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